諦めない!最期の願いを叶える多職種連携の奇跡
手続き代行と思われがちな退院調整看護師。しかし、今回ご紹介する場面は、患者家族の心に寄り添う支援の重要性を教えてくれました。
1.~突然の急変、揺れる家族の願い~がん末期と闘う患者さんが、自宅での療養を強く希望されていました。訪問診療医との連携も整い、退院の日も決まっていた矢先、容態が急変。医師からは「この状態での退院は難しい」と告げられましたが、ご家族は「たとえ短い時間でも、家に連れて帰りたい」という強い思いを抱いていました。
2.~医療現場の葛藤と、立ちはだかる壁~患者さんの安全を第一に考える医療スタッフにとって、命の危険がある状態での退院は大きな懸念事項でした。早急な在宅医療体制の整備、医療設備の確保、そして安全な帰宅が可能か。様々な不安が医療現場を覆い、患者さんとご家族の願いと、医療の現実との間で大きな葛藤が生じていました。
3.~諦めない!多職種連携で道を拓く~しかし、私たちは諦めませんでした。患者さんとご家族の「家に帰りたい」という切なる願いを叶えるため、急遽カンファレンスを実施。訪問診療医と訪問看護師に患者さんの状態とご家族の思いを伝え、在宅での受け入れを緊急で相談しました。酸素の設置手配、医療設備が整った介護タクシーの調整、そして退院調整看護師が介護タクシーに同乗し、訪問看護師へ引き継ぐことで、奇跡的に自宅への退院が実現したのです。
4.~穏やかな最期、家族の感謝~帰宅途中、「〇〇さん、家の近くまで帰ってきましたよ」と声をかけると、それまで険しかった患者さんの表情が、まるで魔法にかかったかのように穏やかに変化しました。ご家族からは「病院では見せない穏やかな表情で、連れて帰ってきて本当によかった」と、感謝の言葉をいただきました。そして、退院の翌日、ご家族に見守られながら、患者さんは穏やかに永眠されました。
5.~住み慣れた家の力、多職種連携の重要性~この経験は、私たちに多くの学びと感動を与えてくれました。人は最期まで聴覚が残ると言われています。患者さんが自宅という安らぎの場所を声や音で感じることで、表情が変化したことに大変驚きました。住み慣れた家の力の大きさを、改めて実感した瞬間でした。そして、私一人では決して解決できなかったこの課題を、在宅医療に関わる多職種の皆さんの協力があったからこそ乗り越えられたこと。多職種連携の重要性と、患者さん・ご家族の思いに寄り添うことのやりがいを、深く心に刻んでいます。